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赤い電車は白い線

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2012年 12月 08日

我が回想のクロ157(貴賓車)

過日ですが、1993(平5)年の運用を最後に眠り続けていたクロ157が19年ぶりに本線走行するという、ちょっと瞠目するようなニュースがありました。これはチタ区周辺の開発に絡んでの保管場所の移動・・・という事のようですが、既にクロ157の役割は御料新1号編成はE655へととってかわられており、本線運用へ復帰する可能性は事実上ゼロ。更にはクロ157の中央室窓下の菊座を掲げる円形のステーが無残にも剥がされており、これの意味するところには車籍抹消もあるのではと見られています。

クロ157が最後に運用されたのが19年前の1993(平5)年という事になると、若年層ファンの殆どはその姿を目にしていないわけでして・・・まあトシをとるとこんな事しか自慢出来なくなるのですよw というように振る以上?は勿論惜しげもなく出します。今を遡る事20年前の1992(平4)年9月4日の新大久保における、私にとって最初で最後となったクロ157の記録です!
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ホーム上はそれこそ昨今のようなパニックになる筈もなく、我々の他に同業者が居た記憶が・・・ほとんどありません。居たとしても数名であり、情報が如何に溢れていなかったかが窺えます。そしてお約束?とも言うべき所轄署刑事による住所・氏名の聞き取り・・・まあいわば撮影に際しての「お墨付き」のようなものですね。そしてこの事により、お召列車の運行は決定的であり通過時刻前であることも確定したわけです。

果たして・・・来たっ!
迫る顔立ちは185系そのものですが、真ん中に挟まる帯の途切れた「異形」に視線は注がれます。因みに通過時刻はメモされていないのですが、フイルムがISO100でかなり露出が厳しかった記憶があるので、夕刻も迫った頃であると窺えます。
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フイルムの枚数には限りがあり、モードラなんかで湯水の如く枚数を稼げない。しかし千載一遇の機会だから多くの角度で撮りたい!そんな欲目からかどれもこれも中途半端なフレーミングですが、それが却って現場の緊張感というか臨場感が漂ってくるように今となっては思えます。
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クロ157の前後の一般車には白制服の駅長?クラスのJR職員や随行員の姿が散見され、明らかにタダならぬ雰囲気。そしてそれに続くのはクロ157こと貴賓車にして、民営化後に唯一生き残った157系一族最後の分子です!
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御座所に相当する中央室はカーテンで固く閉ざされています。以後の御料新1号編成での「平成お召」とは全くカラーが違い、このクロ157によるお召列車の特殊性というかキャラクターを物語っています。そしてそれは御身体がご不自由であった皇太后陛下が御乗用の際に限ってクロ157によるお召列車が運行されたという背景に他ならならず、事実この時は那須御用邸からのお帰りに際しての御乗用でしたが、同行した天皇・皇后両陛下が「特別扱いを嫌った」という都市伝説を差し引いても新幹線でお帰りになっているあたりから、その理由の裏付けが見てとれましょう。
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当時の私は学生。授業が終わるや否や都内くんだりまで労も厭わず駆けつけた若気の至りは、間に合う保障がどこにも無いにも関わらず品川への追跡へと駆り立てたのです。これには原宿宮廷ホームでの降車扱いのタイムロスがアタマにあったのですが・・・。果たして品川駅臨時ホームに白いその躯体が・・・イター!! 菊座は原宿宮廷ホームにて取り外されたと思われますが、その円形のステーが確認出来ます。これは当然ながら御料新1号編成の御料車にも備わっています。
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お召列車=御料新1号編成のイメージが強いのか、それがやはりロクイチ人気によって支えられたものなのかは知る由もありませんが、この刹那に品川の臨時ホームでクロ157にカメラを向けていたのは我々だけという、くどいようですが情報過多の今では全く考えられないような静かさだったのです。僅かな時間ですがつぶさに見てみますと、その1960(昭35)年という製造年を匂わせる東海型低運転台の端正な顔立ちや、後位連結妻に接する洗面所の大型窓がノスタルジー。サボ枠もよく見れば無地のサボが差さっていて、武骨なフレームを露出させないという細やかな配慮にお召列車の感を強くさせられます。
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クロ157はその形式から見ても御料専用形式ではなく製造時で言うところの一等制御車なのですが、「貴賓車」という使途からも事実上の御料車として扱われていました。しかし御料専用形式の殆どが国鉄の自工場で製造されたのに対し、川崎車両製という民間メイドである点で異色であり一線を画していたと言えましょう。此度クロ157は未明の鉄路を19年振りに踏みしめ、多くの仲間が眠る煉瓦造りの御料庫へと収まりました。果たしてその姿を露わにする日はもう来ないのか、それでも何が起こるかわからない浮き世!かつての懐かしいあの日を想起させてくれた今回の引っ越しは、私にとってとても印象に残る出来事となりました。

by ar-2 | 2012-12-08 00:23 | 記憶のレール(国鉄~JR)


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