2012年 02月 11日
まずは昨今の「きたぐに」の運転概況についてです。以前にも記しましたように日本海側での強大な寒波によってもたらされた豪雪により、私が乗車した2/5発以前は2/4発まで恐らく1週間以上に亘って運休。その後も2/6・7発は未確認であるものの2/8発からは寒波の再襲来によってまたもや運休のスパイラルに陥るに至り、まさに間隙を突くようなタイミングで乗車の機会に恵まれた事は、涙を呑んだ同業者が多かったであろう事からも全く幸運としか言いようがありません。 そんな過日の「きたぐに」乗車ルポも漸く纏められたわけですが、今回は581「月光型」に始まり国鉄からJRへの激動期を乗り越え、1967(昭42)年10月改正から実に45年に亘った定期運用への告別の意味も込めて、私のメモリーをピックアップし「特別編:記憶と記録の583」も併せてupしました。それではいよいよ、大阪発新潟行「きたぐに」に乗り込みましょう! 天王寺での青22号との逢瀬はそれはそれでよかったのですが、「きたぐに」大阪入線前のギリギリまで粘ってしまったので食飲料の買出しを後で思いつくもままならぬという、微妙な失態をここで犯してしまったのです。夕食自体は新世界で済ませていますが、やはり夜行列車での旅立ちの一杯は欲しかったですね。車販が無いのはペイできない(儲からない)という事情を承知の上でも、やはり「優等列車」の華やかさに満ちた世界はとうに過ぎ去ってしまったのだなと淋しさがよぎります。 そんな「きたぐに」もこのところは私達のようなお名残乗車組のお陰で多少なりとも賑わっているようで、入線前から期待に胸膨らませた面々が11番線ホームのあちこちに見られます。やがて23時過ぎ、発車時刻の23:27よりも20分以上の余裕をもって583「きたぐに」が入線!昨今の優等列車というと過密ダイヤの弊害から発車数分前入線(客扱開始)というケースもあるだけに、このようなインターバルは見送る側・見送られる側のやりとりが保たれたであろう良き時代を彷彿とさせると共に、「夜行列車」ならではの旅立ち前の余韻に浸らせてくれるに及び、得もいわれぬ感慨が込み上げてくるのです。 11番ホームに「きたぐに」が据え付けられると先頭部を中心にカメラの放列が敷かれますが、発車まで余裕があるのでおよそ殺気立つムードはありません。側面のサボや字幕も当然のようにレンズが向けられ、数多の同業者は「きたぐに」のその記録を仔細漏らさぬと必死です。 A寝台のサボは数が少ないというか列車名が記されているせいか、開孔の上ストラップで括られ盗難対策を施しています。部品盗も以前ほどではないとも聞きますが、残念ながら決してゼロではないのもまた現状ですから、対策を施すに越した事はありません。 大阪と新潟を結ぶ「きたぐに」は、今やJR(旧国鉄)における「はまなす」と並んで唯二の夜行急行列車(定期)、且つ583系昼夜兼用寝台電車の定期運用としては最後の存在としてあまりにも有名です。その「きたぐに」も周知の通り来る3月改正で廃止(季節臨化)となってしまい、5月連休中の再登板もアナウンスされてはいるもののやはり定期列車として終止符の打たれる意味は大きく、お約束とも言うべき駆け込み需要がこのところ急増しているわけです。しかし冒頭にも記しましたようにその運命を弄ぶかのような寒波の襲来により連日の運休が発生し、お名残乗車組みにとってはまさに悲喜交々な日々が展開されているのです。 新潟行「きたぐに」の組成は10連で、最後部から1号車~の順で1~4号車がハザの自由席、5号車がB寝台で6号車がロザのグリーン、7号車がA寝台、8~10号車までが再びB寝台となっています。このような編成中に座席と寝台それぞれが2クラスずつという布陣は昔日の国鉄における長距離列車のイメージですが、これとて今や「きたぐに」で保たれているのみであり、その点が季節臨化という重大事のポイントを高める希少性ともなっています。 今宵私達が「きたぐに」にその夜を託すスペースはB寝台ですが、ここでセレクトしたのは「きたぐに」の1編成中でも8号車に6区画(12寝台)しか存在しないモハネ582のパンタ下に位置する「二段式B寝台」です。モハネ582は交流主回路機器ならびにパンタ積載部が低屋根構造とされ、この直下については寝台を三段式とする事に無理が生じるため二段式(下段/中段)となっているのです。その下段については他の三段式区画同様の高さですが、中段は低屋根構造により天井が押し下げられてはいるものの、上段寝台がオミットされているだけあって高さ方向にゆとりがあり「B寝台料金」で堪能できる事からも人気のスポットとなっています。 私達の割り当ては8号車モハネ582-45の3・4位側の「1中/1下」と「2中」、私は「2中」に収まり早速その空間を堪能します。画像はそこから顔を出して通路を望んだものですが、手前直上に箱型の室内灯が飛び出ているのがお判りいただけましょう。画像奥では早速車内改札に車掌サンが精を出していますが、この日の8号車の入りはザックリ見た感じではパンタ下の前後6区画が埋まっている他は下段に数名が収まっているのみであり、上段から昇降している旅客の姿は無かったように思います。やはり日曜夜発だけあって、お名残乗車組も限定的なのでしょう。 「きたぐに」の組成中におけるモハネ582は他に2両ありますが、それらは2・4号車の自由席車であるため寝台車としては機能しておらず、前述の通り「二段式B寝台」は8号車にしか備わっていないのです。それではその「2中」の空間を早速紹介しましょう。画像は3・4位車端部側から見た同寝台内でして、左手が日本海側となります。枕の位置は読書灯および採光窓の位置と揃えてありますが、ここはお好みで。 こちらは枕側からの同寝台内、奥が3・4位側の車端部で右手が日本海側です。向かいの壁にはハンガーを吊るすためのフックがあり、走行中に揺れでカタカタ鳴るのではと思いましたが杞憂でした、窓側下部の大きな張り出しは寝台収納機構のヒンジでして、このあたりの大仰なギミックが如何にも昼夜兼用電車らしさを匂わせます。その張り出しは画像のように一部分をフラットとされていて私は荷物置場?と勘違いしたのですがとてもそんな機能が有せるほどの幅もなく、どうやら簡易的なテーブルのようです。 それでは荷物はどこに置くのかというと、14系や24系の枕木方向B寝台上段のような通路側上部を活かしたスペースも無いので、ベッド上に同居させるより他ありません。3・4位側のデッキ手前、かつて乗務員室があった箇所が旅客用荷物置場になってはいますが、このご時勢に目の離れる場所に置くのもあまりお薦め出来ません。ましてや夜行列車ですし・・・。因みにこれら同寝台内2枚の画像ですが、いずれも身長173cmの私が正座で上体を完全に起こした状態で撮影したものです。三段式の中段では上体を完全に起こそうにも上段底部にアタマをぶつけてしまいますから、その点でも「きたぐに」編成中僅か6寝台しか無いパンタ下「中段」のゆとり具合がお判りいただけましょう。 寝台列車といえばやはりこれ?「ノビノビ」や「ゴロント」と違い、リネンと共に寝台列車たるアイデンティティの証でもある備え付けの浴衣です。そのデザインはてっきり「JR」マーク入りを連想していたのですが、意に反しての「工」デザインでした。国鉄時代の敷地境界票やメッチでも見られたお馴染みの「工部省」ゆかりの「工」、平たく言うと国鉄時代から継承されているものですね・・・感動! 寝台から見て通路側とはカーテン1枚のみで仕切られていますが、密閉状態では暑苦しいがかといって開放するのは・・・という向きへの心遣いとして、カーテン上部にはマジック留めの画像のような小窓が設けられています。この仕様はカーテンのデザインに違いはあれど国鉄時代からここ西日本はもとより東日本の583にも継承されており、こういった一見「過多」にも思えるスペックが簡単に殺されないのもやはり優等車両たるからなのでしょうか。 車内改札を済ませ、寝台回りのチェックや「きたぐに」乗車の感慨に耽ったりしていたらアッと言う間の発車時刻。23:27の定刻に「きたぐに」はホームに残る同業者の傍らをスピードを上げながら過ぎ去り、大阪を後にしました。優等電車不滅のシンボリック・メロディー「鉄道唱歌」のオルゴールチャイムと共に「きたぐに」は北の空を目指します。 (つづく)
by ar-2
| 2012-02-11 13:23
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