2011年 10月 15日
特別編記事その1、特別編記事その2もそこそこに、コマを進めましょう。彦根に到着して見渡せばいつも通りの構内。 他方、変わったモノとそうでないモノとが確かに存在し、前回からの歳月の経過もまた実感させられるのです。 その構内はといえばすっかり「顔」となった遊休車両がある意味名物なわけでして、まずはそれらを少々・・・。 まずは800系の部品供給車として西武鉄道時代のオリジナルの姿態を留めたままのクモハ419+クモハ420(西武車番)。 そもそもはこの編成も800系への改造が予定されていたものの、計画変更によって改造が取り止めになった・・・という ハナシもありますから、部品供給車という意味合いは後付け的なものなのかも知れません。しかし実際にはかなりの床下機器が 取り外されていますから、それが結果的とはいえ部品供給車になっているのもまた事実なわけです。 オリジナルというくらいですから飾り帯を有す前面に2丁パンタ、側面の車番はもとより「西」マークの社紋に至るまで 何一つ西武時代と変わっていません。無論これは総38両(19本)全てがセカンドステージに恵まれたという401(Ⅱ)系 一族にあっても唯一の事例であり、これを目当てに訪れる西武ファンが居・・・てもおかしくないでしょう。 かつては高宮構内に留置されていた419Fは数年前になって彦根へと移動するという(つまり被牽引とはいえ本線走行した) サプライズを見せ、彦根構内に定住するようになってからもこまめに移動を繰り返し何とか生き延びているのが現状です。 外観上の状態はというと手付かずのビジュアルから放置車両の威厳を感じ取れるとはいえ、近江入りしてから15年を 経ているという割にはまだ何とか見れる?程度ではないでしょうか。先の506F解体の事例もありますが、彦根構内が スペース面で逼迫しているとは考えにくいので、当面419Fに大きな変化は無いのではと思われます。 続いてこちら(右手前)はモハ807+モハ808(西武車番)です。801系は701系グループとして包含する考え方も ありますが、4連5本(総20両)のみの製造という試作的要素を有した少数派だったそうです。その801系の中間車 ユニットが事もあろうに近江入りしたのは、実はこちらこそが800系への部品供給車であったのだという説があります。 現在はその存在意義を部品供給用というよりは「倉庫代用」に求め、それなりに痛みが見られるもののユニット揃って 健在です。なお801系の中間車は5ユニット(10両)と元から少ないですが、他に1両が総武流山へと譲渡されるも 現在は廃車解体済とのことですから、ここ近江の倉庫代用が801系中間車の現存例として唯一という貴重なものでしょう。 因みにこちらも先の419F同様、距離は劣りますが多少の構内での移動機会のある事を確認しています。 彦根構内の遊休車両にあって「最新」の存在がこのクモハ291(西武車番)です。西武鉄道における新CIのステッカーも そのままの姿で留まっていますが、以前と比べますと貫通路のベニヤ板が消えて替わりにビニールで塞がれています (別ウインドウ画像の左奥がクモハ291、手前はクモハ269)。単なるベニヤ板の破損なら代替品を充てそうなものですが、 何が理由があってのことなのか興味深いところです。近江入りした西武の101Nはクモハ269+クモハ270のユニットと このクモハ291の3両で、やはりクモハ291については部品供給用という見方がなされています。あとのメインとなる 2両については譲受後既に2年が経っていますが特に表立った動きは見られず、近江のマイペースっぷりが窺えましょう。 GMの1/1サービスパーツ(違 も相変わらずですが・・・果たして日の目をみる事はあるのでしょうか? 模型的視点で見ますとこれはそれこそGMのサービスパーツで簡単に再現できそうですね。本物件のように錆止め?の 下塗りとして赤一色を吹き付けるだけで、それっぽく見えるのが楽しいところでしょう。 構内での観察をひとしきり終え、一旦駅前のホテルに荷物を置いてから再度駅へ。少々のインターバルを挟むもまたもや 橋上通路から構内観察・・・飽きないものですね。その内クラの脇に居た821Fが出庫の気配を見せ、18:35発の 多賀大社前行への充当とアタリをつけ乗車する事にしました。日もすっかり落ちたホームで待てば、もう1本の820系である 822Fが18:23発の米原行として姿を見せました。ピカピカになった821Fと比べればくたびれた感がありますが、 夜目ですとそれが判らないのがある意味悩ましい?ところです。 米原行の822Fがホームを離れて程なく、クラの脇から出庫してきた821Fがホーム隣接線へと入り、据付けのための 入換を行っています。夜目にも映える鮮やかなレモンイエローを纏ったその姿から、かつてのみすぼらしいイメージは 微塵もありません。車体裾四隅の面取りという苦肉の策や地上設備の改造の甲斐あったからこそ、総38両中28両もの 西武401(Ⅱ)系がこうして近江でセカンドステージを歩めているのでしょう。大手から一地方私鉄への同一形式の 譲渡例としては恐らく最大規模であろうというのもさる事ながら、モハ220形を別とすれば700・800・820系で メカ的な車種統一が図られている現状や近江鉄道自体の懐具合から察するに、当面はこのまま推移して行くのでしょう。 アタリ通り821Fは18:35発多賀大社前行へと充当され、やがて定刻に発車し彦根を後にします。 時刻的には平日の夕ラッシュ帯ということもあって帰宅の用務客の姿が目に付く車内ではありますが、 およそ満席には程遠い乗車率であり近江鉄道を取り巻く輸送需要の厳しさを恒間見たような気がします。 私が近江に通い始めてから初の「夜のお散歩」ですが、その行く先は多賀線の分岐駅である高宮としました。 これは駅構内の風情目当てというのもありますが、高宮以遠まで足を延ばしますと本線でもタイミングが悪ければ 折り返しの便までおよそ1時間待ちとなってしまうからです。 多賀大社前行の821Fが去った三角形のホームは静寂そのもの。構内を照射するところどころの灯具によって浮かび上がる 数多のパーツは恐らく何十年来にも亘って「不変」を保ち続けるもの・・・石畳の構内踏切、方杖を用いる木造の上屋支柱、 使われる機会を失った側線、レンガと石積で織り成されるプラットホーム・・・。 進路を司るシグナルばかりがいやに目立つ構内、中線を有すゆったりした配線の向こう側の空はどこまでも拡く、石畳の 構内踏切に佇み見上げればさも吸い込まれて行きそうな錯覚に陥ります。今夜は雲が厚いのか星は見えませんが・・・。 二つの列車が同方向から接近してきました。右の本線列車は高宮止まりで折り返すので、彦根方面へは左の多賀大社前発へと 接続します。多賀大社前発の列車はスクリーン駅に接した事業所からの退勤客で席はほぼ埋まっており、それがたった 一つであっても事業所の有無だけで「これほどまでに」輸送需要に差を生じる現実を目の当たりにし、昨今において 鉄道をはじめとした地方公共交通機関を維持する事の難しさと、その立場の「脆弱さ」を悟らされる思いがします。 高宮から彦根に戻ればあとは投宿のみ。初の長丁場となる3日目を明日に迎えます。 画像はJRの橋上改札にて・・・こうゆうのを見ると思わず「日常」がよぎります。色んな意味で地続きなんだなと・・・。 (つづく)
by ar-2
| 2011-10-15 16:28
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