2013年 09月 17日

渡島有情(2日目その1・回遊!函館市電)

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渡島有情(1日目・「あけぼの」に見るブルートレイン象)

函館駅に到着した私達は荷物を預け、函館市電回遊へと繰り出します。その許される持ち時間は3時間にも満たず、且つ市電全線走破も目論むという無茶振りっぷり。果たしてどうなるのでしょう・・・。



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持ち時間が僅かとは言うものの、食べるモノは食べておきたいわけで、会長様が以前より気になっていたという青葉寿司 函館駅店で昼食を済ませる事としました。こちらは土産物コーナーの一角に構えたイートインの鮨店で、立ち食いで気軽に摘んで行くというスタイルは、まさにファストフードであった握り鮨の原点そのものです。
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私は「特上セット」と単品の3貫セットをオーダー。板さんが注文を受けてその都度握りますから作り置きは一切無し。ネタも新鮮でシャリも美味しく、どちらかというと苦手だったウニも別物のような味わいで舌鼓を打ち、さすがは港町・函館の海産物にハズれ無しの印象を強くしたのです。
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函館駅を出れば早速市電がお出迎え!710形のラストナンバー724号で、1961(昭36)年新潟鉄工製の齢52年と半世紀超を誇りますが、かくしゃくたるものです。
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その724号の谷地頭行にタイミング良く乗車します。運転台機器周辺のコンソールは纏められた印象がありますね。この710形は1959(昭34)~1961(昭36)年にかけて14両が増備され、全車が新潟鉄工製。メカ的には間接自動式による制御で、マスコンを逆回転させると発電ブレーキを作動させられますが(マスコンプレートに「ブレーキ」の鋳込みがあるのを確認)、実際に用いられる事はあまり無いと言われています。
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724号の方向幕対照表です。赤色と青色の地色に白抜きの「百」は、市電100周年の記念ロゴ。アニバーサリー期間中はこのロゴが印刷されたコマを掲げて運行されるようです。
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北国というのもありましょうが、函館市電における非冷房車の率は高いです。年間を通じての冷房稼働期間の費用対効果、即ち無理をしてでも冷房車で満たさずに出来る環境であるという背景も考えられます。例えば、800形811号の機器流用車である8000形8010号は「今年」2013年にアルナ工機の手で竣工しましたが、さも当然のように冷房装置は載せていませんし、扇風機すら無いのです。

函館駅前から724号に乗り込めば、出迎えてくれた板張りの床板が優しい。前面腰板には生まれたままのおヘソライト、ミッドナイトにはきっと函館の街々を仄かに照らし上げ、郷愁を感じさせてくれる事でしょう。板張りの床板に映り込んだ太陽光の先には泰然たる存在感のバス窓が半世紀来不変の姿を、凛と、凛と湛え、連ねています。ゆっくりと閉まる客扉にハッパをかけるように、コントローラを一捻りされた724号は吊り掛け駆動の轟音も逞しく、力いっぱいメインストリートを駆け出して行く・・・嗚呼、これこそ旧き佳き、ジャパニーズ・アンティック・トラム!
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函館市電の系統は基幹として「2系統・湯の川~谷地頭」と「5系統・湯の川~函館どつく前」の2本から成り立っています。路線形状としては湯の川を起点としたY状で、運行回数も2系統と5系統が重複する湯の川~十字街間が多くなっています。平成の御代となって以降も公営路面電車としては最長の営業キロ(17.8km)を誇った函館市電ですが、1992(平4)年の東雲線、1993(平5)年のガス会社回りの廃止により現在は10.9kmとなり、最盛期の6割程度に規模に縮小されています(因みに現在の公営路面電車における営業キロ第一位は鹿児島市電、第二位は東京都電/熊本市電(ともに12.2kmで同列)、函館市電は第三位、札幌市電は第四位で10kmを割っています)。

運賃体系は多区間による整理券方式ですが、観光はもとより鉄道趣味における撮影行でも電車一日乗車券(大人¥600/子供¥300)を用意するのがベターでしょう。支払時の小銭への両替といった煩雑さの解消と、スムーズな乗降促進による定時運行の確保はもとより、多回乗車であればおトクになるわけですから、利用者/事業者双方にメリットはあります。
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724号に揺られる事暫し、谷地頭の一つ手前の青柳町で下車。
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ここ青柳町と谷地頭間には、函館市電最急勾配の58.3‰が控えており、「坂の街・函館」のイメージと函館市電を絡められるスポットの一つです(基坂(もとのさか)から市電越しに函館港を望む景も有名ですが)。青柳町電停から谷地頭方向に進むと、ほどなく眼下に先程まで乗車していた724号と谷地頭電停が見えます。
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その724号の折返し湯の川行の後ろ姿を、勾配の途中からシュート!空の抜けたアングルは新鮮ですが、それと同時にシンプルな出で立ちの724号の姿にも目を奪われます。非冷房の路面電車は、やはり美しい。
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空の向こうへと消えゆく724号を後ろに、私達はそのまま谷地頭電停まで坂を下ります。ここから乗車すれば未乗区間を残さずに済むというプランです。谷地頭電停は坂を下り切ったポジションという特殊性?故にか、車止めもバラスを詰め込んだおよそ路面電車用とは思えぬ大仰なもので、万一の制動不良に備えた姿勢が見てとれます。
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谷地頭からは3000形3002号に乗車。3000形は1993(平5)~1996(平8)年にかけ総4両が増備されたVVVFインバータ制御・カルダン駆動の完全新製車。アルナ工機謹製で、シングルアームパンタに冷房完備と、如何にも近代の路面電車然としています。車内の車番プレートには別板で「Ⅱ」とあり、3002号に初代とか二代目が存在するのか?とも思いましたが、反対エンドには「Ⅰ」とあり単なるエンドプレートと判明。しかし、路面電車でここまで律儀かつ豪勢?なエンドプレートを車内に備えた例を知りません。他にあるのでしょうか?
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3002号では3つ先の十字街で下車、ここから函館どつく前に向かいます。十字街は函館観光の中心スポットとも言える場所にして、函館市電における分岐電停という要衝でもあります。現在は機能していませんが現存個体として貴重な信号塔が保存されており、画像でもその可愛らしい姿が確認できます。奥に見えるドームを有した重厚な建物は旧・丸井今井函館支店で、現在は函館市地域交流まちづくりセンターとなっています。同建物は1923(大12)年に3階建で竣工したのが後に5階建てに増築されるも、2007(平19)年の大改修で再び3階建てに戻されているのだとか。他にも函館市内には近代建築の類が多数あり、路面電車を含めて堪能しようとすればとても1日で足りるものではないので、これらはまだ見ぬ後刻の楽しみとしておきましょう。
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十字街からは8000形8008号に乗車、重要文化財である旧・函館区公会堂の壮重なる姿を遠くに眺めながら観光スポットの中心を抜け、数分走って函館どつく前に到着。8000形は800形の機器流用車で、1990(平2)年以来今日に至るまで地道に増備が続いています。最新の8010号は先にも触れた通り今年2013年の竣工で旧車番は811、これにより現在800形として残るのは812号唯一両のみとなっています。

8000形といえばグレイスモデルさんの1/150スケールモデルプラキットがあり、私も入手しましたが未だ手が付いていません(汗 しかし同サイトをスクロールいただければ判る通り、何と平成25年度内を目標に500形(更新前)モデルの製品化がアナウンスされています!これはもう大量買いではないでしょうか?因みに「函館の路面電車100年 函館市企業局交通部編」によれば710形のモデル化も考えられているようなので、今後の動向が大いに注目されましょう。
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函館どつく前の終端部は画像の通り至ってシンプル!谷地頭とは対照的な質素さで、車止めらしきものがありませんw 一応軌条先端には三角形のハンドスコッチのようなブロックが溶接されていますが、いかんせん背が低いので過走すれば路面への飛び出しは免れないでしょう。まあ路面電車の終端部なんてこんなものですね。谷地頭が特殊なだけです。
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函館どつく前からは8008号で今来た道を折返し、湯の川まで乗り通します。その途上では「函館ハイカラ號」とも離合!今年で復原から20年目を迎えますが、函館市内観光の目玉としてかくしゃくたるものです。この「箱館ハイカラ號」には後に乗車する予定のスケジュールとしています。
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函館駅前を貫通し、色とりどりの電車とすれ違いながら数十分、函館空港がほど近い湯の川に到着です。ここで見る「第三の終端部」は、谷地頭とも函館どつく前とも異なるスタイルで、まさに三者三様の個性が醸されています。緩衝ゴムが込まれたコンクリートブロックの車止めはある意味スタンダードですが、谷地頭は別としても函館どつく前との差は何なだろうと、色々と思考を巡らさせてくれます。とは言えこの何でもアリ感こそ、路面電車のなせるものなのかも知れません。

2日目その2に続く)
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by ar-2 | 2013-09-17 13:04 | 外出・旅行 | Comments(0)


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