赤い電車は白い線

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2010年 12月 07日

讃岐の国に夢を見る(3日目その1・讃岐に舞う古典車両を追う)

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明けて11月27日(土)、部屋の窓から望む高松市中心域は快晴!本日の「レトロ車両特別運行」への期待は一層膨らみます。「スーパーホテル」御馴染みのバイキング形式での朝食をしっかり摂った後、瓦町の駅へと向かいます。



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その特別運行は築港10:05発とかなり余裕があるのですが、落ち着きの無い?我々はそれも構わず瓦町駅へ。昨日も用いた「1日フリーきっぷ」を購入します。とりあえずは複線区間と単線区間の境目である栗林公園まで行きます。
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駅から高松寄りに少し進んだ踏切で往来する電車をパチパチやるも、ビル影のお陰でどうも・・・陽射しの低い冬場は悩ましいですね。そうするうちに仏生山から築港への当該編成(300号+500号)の送り込み回送が来るだろうと気付き(←今更)、ホーム端で待機。果たして姿を現した500号先頭の2連!いやぁ、8年前とはうって変わっての装いですが、旧々標準色のツートンもナカナカ渋いものです。
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そしてホームにユルユルと停車。チャンスとばかりに次位の300号も撮影です。こちらは8年前とは楕円戸袋窓復活・旧々標準色化を経て、更に琴平電鉄時代をイメージした茶色一色化と劇的に変化していますが、復刻とは言えその楕円戸袋窓とマッチングしたシルエットが、やはり「日車」ボディなのだなと強く感じさせます。この小細工を蔑視していた筈なのに、私はまたその魅力に牽きこまれようとしています。
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判ってはいたものの、見ると聞くのとでは違う「古典車両健在」の現実にボルテージは高揚!後続の上りで瓦町まで戻ります。程なくやって来た10:11発の琴平行「特別運行」は定期列車の後走りでして、乗車券のみで乗車できるいわば増発便です。ですから「たまたま」乗り合わせる旅客も多いのですが、月イチの運行ですから物珍しさというよりは「また走っているね」といったご様子。
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乗客の大半は勿論ファン層ですが、思っていたとおり満席ではなく実にマッタリしたムード。月イチという運行頻度ゆえの事なのでしょうが、逆に毎月このような運行に接することが出来るとしたら、こんなに楽しいことも無いと思います。地元のファンが羨ましい限りですね。
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一宮では写真撮影を勧めるアナウンスがあって約6分の停車。カメラを持ってホームに出たりして乗客は思い思いに過ごします。私も当然そうするわけですが・・・すでにこの時点で「細部」を意識した撮影を始めています。その顛末は最近の記事の通りですが(笑
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先頭に立つ3000形300号。形式と比べて車番の桁が少ないという妙な付番方式ですが、これは琴平電鉄時代からの慣習とされています。もちろん全ての琴電形式に当て嵌まるわけではないのですが、例えば810号は8000形なのに850号は850形であったりと、同時期に存在し且つ近いナンバーであっても全くの別形式にして「桁違い」と、ナンバーファン歓喜?の難解さがあったのです。
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琴電が現在有するレトロ車両、いわゆる古典車両群は1000形120号、3000形300号、5000形500号、20形23号の全4両。私が前回訪れた8年前にはこれらの形式を含めた手動加速車(HL車という)がある程度纏まって居ましたから、それ以外のいわゆる電動カム軸による自動加速車との「併結運転」が行われていました。そもそも、HL車と自動加速車による協調運転は困難とされていますが、琴電では元・京急車や元・名古屋市営地下鉄車との手動加速車の併結運転をやってのけていたのです。ではどのようにしてでしょうか。

それは自動加速車のマスコン(主幹制御器)をHL車のモノに取替え、且つ1ノッチで起動、2~5ノッチではどの位置にハンドルを置いても直列(シリース)、6~9ノッチでは同じく並列(パラ)まで自動的にノッチアップする構造としたのです。これにより、HL車と併結した場合は自動加速車においてもHL車のように「1ノッチ、1・2、2ノッチ・・・」と操作することにより、自動加速車は前記の通りに勝手にノッチアップし、HL車はステップを踏みながら徐々に加速していくわけです。このシステムの確立によって旧態依然としていた保有車両の近代化が進み、それは1984(昭59)年に琴電初の冷房車としてデビューした1070形へも繋がっていくわけです。
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一部では「総括「非」強調」とも言われる琴電独特のこの制御方式は長く続き、1200形(元・京急700形)の投入まで自動加速車へのHLマスコンの換装がなされました。もっと言うと、現在琴電においてHLマスコンでないのは最新の1300形(元・京急1000形新製冷房車)のみなのです。画像はその1200形の運転台、マスコンにはしっかりと「WESTINGHOUSE」の銘が入っています。何ともミスマッチ!

そしてHL車と自動加速車の併結が消滅した現在の操作方法ですが、実見した限りでは自動加速車におけるHL方式は行われていません。ただ、実質「3ノッチ」で操作していますからよくよく見れば何か妙だな・・・という気がしなくもありませんね。一方のHL車は、当然ながら1ノッチずつ手動でノッチアップしていきます。特に6ノッチ(パラ)に入るや否や抵抗器を介するからか、モータ音が「ゴォー」と甲高く変調するので「これぞ電車」という感覚にとらわれてしまいます。
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やがて列車は昨晩も訪れた滝宮に到着。ここでも約6分停車です。
琴電が有する4両の古典車両ともども、「近代化産業遺産」に認定されている滝宮駅駅舎。昨晩とはうって変わって明るい表情を、南国の陽射しの下に湛えています。先頭に立つ300号とは84年にも及ぶ同窓生!丸型ポストとのマッチングも絶妙です。
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ここで改めて、本日の特別運行に供されている車両を紹介しましょう。琴平寄りの先頭に立つのは3000形300号、車齢84年を迎えました。当時の琴平電鉄がその開業に先だって1000形と共に導入したものですが、1000形が汽車会社製であるのに対してこちらは日本車輛製。いずれも「一流メーカ」の手になる車輛ですが、このような一地方私鉄としては背伸びしすぎた投資が戦後に至るまで影響を与えたとされ、琴電となってからも導入車両の殆どが中古で賄われた事の最大の因子となっています。尤も、流石は一流メーカ製というだけあってか堅牢な造りが幸いして近代化が進む中で近年まで重用され、今日の琴電におけるイメージの一角を担う存在であることは周知の通りです。

側面の楕円戸袋窓は1966(昭41)~67(昭42)年にかけての更新で一旦は失われたものの、2003(平15)年に旧々標準色化と併せて復活。更に本年3月には琴平電鉄開業時をイメージさせる茶色一色へと装いを改めています。この茶色一色化については他の古典車両と連結した折の「編成美が崩れる」という見方もあるようですが、楕円戸袋窓が流行した大正末期~昭和初期にかけての「日車スタイルが」より強調され、シンプルさの中にも奥深き味わいとそして楕円戸袋窓が織り成すデザインの妙が惹き立ち、むしろ私は大いに好感を覚えるのです。
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そしてこちら、300号に従うのは5000形500号。滝宮~琴平間開通の翌年である1928(昭3)年に登場した琴平電鉄の自社発注車です。ややエッジの張った無骨なスタイルにして1000形や3000形のような楕円戸袋窓も新造時から設けらておらず、製造元も加藤車両という西日本において軽便鉄道等の客車・気動車を中心に製造していたメーカへとスイッチしているあたり、お値段を下げた印象があります。そうは言っても新造時に有していた客扉脇の縦樋を兼ねた(!)真鍮磨き出しの手摺は装飾性が強く、高級品調度への未練も感じられましょう。当初は両運転台の制御車として製造され1000形・3000形の伴侶として活躍しましたが、1953(昭28)年に電装化され現在に至っています。
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この5000形が1928(昭3)年製であるというのは前述通りですが、私としては同年生まれの阪堺電軌モ160形が同年製造にして、その車内製造銘板が右書きで「社会輛車崎川 戸神 年参和昭」とあったことを思い出すと同時に、対する5000形の車内製造銘板が「左書き」であることに不思議な感覚を覚えるのです。このあたりは確証が無いのですが、恐らく昭和初期は右書きから左書きへとスイッチしつつあった時期なのだろうと思いました。その5000形500号は銘板から昭和3年2月製と読み取れます。
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古色蒼然とした機器には、しっかりとウエスティングハウスのプレートが・・・。3000形、5000形とも台車も既にオリジナルのもではありませんが復刻の楕円戸袋窓然り、そこには例えていうなら秘伝の「タレ」の如く継ぎ足しに継ぐ継ぎ足しで連綿と受け継がれてきた味わいがあり、平成の御世にこの素晴らしい古典車両の健在たることを感謝するものです。
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バネの硬くなりかけたシートに身を委ね、背面の側窓にはヨロイ戸。暖かな陽射しに染まる讃岐の大地を2両編成の古典電車は、ありったけの爆音を奏でながら多くの乗客の「夢」を運びます。そう、私は今まさに「夢を見ている」のかも知れないとさえ思えるのです。
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小一時間に及ぶ「夢の時間」はアッという間・・・11:24、終着の琴電琴平に到着です。

(つづく)
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by ar-2 | 2010-12-07 23:53 | 外出・旅行


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